◇03. 三度目の君

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 一瞬。M図書館に続いて偶然雨音の勤務先で出会ったことからすると偶然? いや。青年が雨音のストーカーという説もある。しかしながらすぐに雨音はその可能性を脳内から打ち消した。何故なら。  探しているのは雨音のほうで。……あれから、毎週のように。否。毎日、足しげく、会社帰りに、或いは休日に、M図書館に足を運んでいるというのに、……一向に青年の姿が見当たらないのだ。あの目立つ茶髪、それに長身。見かければすぐに分かるはずだろうに。  お礼が言いたかった。――映画。どんなだったか教えて――欲しかった。  と考えてしまうのは、図々しいだろうか。雨音は、自分が、精神障がい者であることが時々、嘆かわしくなる。  三十二歳という年齢になって。地元のみんなはとっくに……後輩ですらも三人の子の親だったりするのに。自分には浮いた話さえない。  捨てられた。  という記憶が残るあの苦い苦い、二十代の半ばの夜以降。雨音は、異性とは縁のない日々を過ごしている。  それどころではなかった。  といえば、それまでだが……。 『それでは受賞された望結先生に、お言葉を頂戴したいと思います――』
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