◇01. 図書館の君

3/4
前へ
/102ページ
次へ
 お嬢さん、という耳慣れぬフレーズに彼女は固まる。見れば、……神がきまぐれでこしらえた天使のように、美しき青年が、彼女に本を差し出していた。 「あ……りがとうございます」と彼女が礼を言うと、青年は穏やかに微笑み、 「映画も面白かったよ。……手が届かないときはまたぼくを呼んでね」  そこで彼女は初めて気づいた。青年が、エプロンをしていることに。そして、……言葉遣いからして青年は、盛大な勘違いをしている。  むすっとして彼女は答えた。「あの。……職員さん。お気持ちは嬉しいですがあたし、子どもじゃありません」
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

303人が本棚に入れています
本棚に追加