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透明人間になりたい
人の体は食べたものでできるらしい。
偏ったものばかり食べていると健康を損なうとか……。
もしお菓子を食べ続けたら、人はお菓子になれるのか?
それとも甘くなるんだろうか?
実際、太るだけかもしれない。肌荒れなんか起こしてさ。
でも……。もし本当に食べたもので体が作られるなら。
私は透明な物ばかり食べて、透明人間になりたい。
疲れてしまったのだ。人の顔色ばかり窺う毎日に。
学校の先生の顔色を窺って、優秀な生徒でいる。
友達の顔色を窺って、友達が欲しそうな言葉を選ぶ。
親の顔色を窺って、いい成績を取って親孝行な子どもを演じる。
そんな毎日の何が楽しいのか。
だけど自分勝手に振る舞う勇気はない。
私が今まで歩いて来た道を踏み外す度胸もない。
だから誰からも見えない存在になりたいのだ。忘れ去られたっていい。
透明な水を飲んで、サイダーを飲んで。
春雨に寒天、プチマリン、ところてん。
思ったより透明の食品も飲料水もないみたい。
もっと調べないと。
私は透明人間になりたいから。
……なんて妄想をして、結局また皆の顔色を窺って笑顔を貼り付ける。
了
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