17人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「あんた、俺たちを見送ってくれた死神だろ? 覚えてる! すごい、あんたが迎えに来てくれたのか。え、もしかしてそういうシステムなの? まじか。ねぇ、俺の人生見ててくれた?」
嬉しそうで馴れ馴れしい青年の態度を煙たく思いながら、死神は改めて死神の書をめくる。
そこに浮かび上がったのは、27年前に見送った魂の情報だった。
そいつは、自らの人生に大きな試練を課した。
やり遂げられるのか死神は疑問に思ったし、きっとこいつも全部忘れて怠惰な人生を送って終わるのだろうと思った。
口ばっかり立派なことを言うやつほど、ふたを開ければ何も入っていないのが常だ。
死神は彼の経歴を読む。
今回の人生をどう過ごしたかを読む。
――なるほど、まあそうだろう。死の直後からこんなに意識がはっきりしているのを見れば、やり遂げたことくらいわかる。
青年の死亡予定日は今日だった。
病死だった。
彼は最期の瞬間まで、今を乗り越えて生きようと、たった一人で戦っていた。
死神は死神の書をぱたんと閉じ、
「よくやった」
と青年に声を掛けた。
最初のコメントを投稿しよう!