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――ああ、また失敗だ。
右肩に乗せた大きな鎌をぐるりと旋回させて肉体と魂のつなぎ目を刈り取った死神は、苛立ちの溜め息を吐いた。
何百万年と繰り返される作業。毎日毎日、死神は魂を刈る。
――こいつを送り出したのは、そう、32年前だ。
懐から取り出した死神の書は、適当に開くだけで求める情報が浮かび上がる、便利な代物だ。
そこには人間界に生を受ける前の「中身」の姿と、魂名と略歴が載っている。
死神の心に、あの日の希望に満ちた笑顔が蘇る。
パラパラとめくると、最近迎えに行った人間たちの情報が次々と出てくる。
――くだらん。
真っ黒いインクを零したような禍々しいオーラを纏うその書を閉じ、まだぼんやりしている魂の裾を捕まえて、すっと天界へ上がっていく。
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