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今日もまた仕事だ。
死神は日本のとある街に向かった。
地上では、救急隊員がせわしく担架を運んでいた。
彼らが目指すマンションの一室は、玄関の扉が30㎝ほど空いており、そこには一人の青年が扉に挟まって倒れている。
青年はパジャマ姿で、スリッパを履いていた。
既に魂は体を離れ、次の行き先を模索してふわふわ漂っている。
すーっと降りていった死神が、ぐるりと鎌を旋回させる。
救急隊員たちが青年の体を見つけ駆け寄ったが、もう事は済んでいる。
長く伸びる魂の裾をくるくると手に巻き付け、死神は一気に天へと昇っていった。
――えっと、こいつの死因は。
懐から取り出した死神の書を開こうとすると、
「あれ、俺死んだ? あー、やっぱりここまでだったんだ。いやあ、めっちゃきつい人生だった。あれはマジないわ。よく頑張ったよ俺、ホント」
聞こえてきた鮮明で明るい声に、ギョッとする。
「ねぇ、あんた死神? 俺死んだんでしょ? 死ぬと思ったんだよね。俺の遺体、発見してもらえたかな?」
死神はぐるりと頭を回し、声を発する魂を下瞼の大きく下がった目でぎょろりと見た。
「あれ、あんた……」
目が合った途端、青年の瞳は輝きを増していく。
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