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殴りたい腹
どうにかいろいろなことが落ち着き出し、自分自身のことに向き合う時間ができるようになりました。
その頃はまだコロナが流行る前だったこともあり、外に出かける機会も増えて、少しですが服にも気を遣うようになっていました。
そんなある日、風呂に入る前に鏡にうつる自分を見て、愕然としました。
「うわ、お腹出てるな」
今思うと、そんな「出てるな」レベルの出かたではなかったんですが、この時は太ったせいで出ているのだと、本気でそう思っていました。
最後にまともに運動したのは、体重計に乗ったのっていつだろう……?
おそるおそる、体重計に乗ってみました。
過去最高を叩き出した体重計の数字は、ショック以外の何物でもありませんでした。
――さすがにヤバイ、痩せよう……。
そう思った私は筋トレを始めました。
筋トレの内容は自宅でできるような軽いものと腹筋。
その効果もあってか、数キロは痩せることができましたが、お腹は一向に減りませんでした。
お腹は痩せづらいって言うしなと思い、根気強くお腹に効く筋トレなどを調べてやっていましたが、一向に痩せることはありませんでした。
コルセットにも挑戦してみましたが、コルセットをしている間はいいものの、コルセットを取ったらすぐに元どおりになる腹。
まったくへこむことのない腹に、そして痩せることのできない自分自身に、毎日毎日腹が立って仕方ありませんでした。
どうしようもない苛立ちと怒りで腹を殴ったこともありました。
それで腹がへこむわけもなく、筋トレに比例するようにふくれていきました。
大きくて真ん丸なスイカのようなものが、それでいて固くなくてプニプニしたものが入っているような、そんな感じでした。
妊娠しているお腹とはまったく違うもので、そんな尊いものではありませんでした。
その時の写真を見返してみましたが、どう見ても異常なふくれ方をしていました。なんでこれを太ったと思っていたのか、おかしいと思わなかったのか、当時の自分を疑いました。
――地獄絵図に描かれている餓鬼。
決していい表現ではないとは思いますが、自分自身のことなので、そう表現します。あと最初に浮かんだのが本当にこれでした。
ただ太っただけのふくれ方なわけがないはずのに、それでも太っただけと思っていたのは、自分がそう思いたかったからかもしれません。
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