プロローグ

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プロローグ

 春、四月。桜の見ごろは去り、ほぼ散ってしまった。しかし、入学式もつつがなく終わり、俺たちは高校生になった。学内のいたる所では早くも部活動や同好会の勧誘合戦が始まっていた。  そんな中――  勧誘する在校生たちがひしめき合うメインストリートから少し離れた場所で、必死にチラシを配っている女の子がいる。  今日は暖かいからだろう、ブレザーは着ておらず、ブラウスにスカートという制服姿だ。リボンの色は青で、新一年生のカラーだ。  同じ一年生の女の子がたった一人で勧誘活動をしていることにちょっとひっかかった。  それにしても、気の毒なほど誰もチラシを受け取ろうとしない。彼女の姿は、童話の花売り娘とかマッチ売りの少女を彷彿とさせた。  なんで誰も見向きもしないんだよ。チラシくらい受け取ってやれよ。  俺は気がつくと彼女に向かって走り出していた。  後ろから、どこいくんだよという友人たちの声がしたが、無視する。  彼女が何の部活か同好会に属しているのかはわからない。  それに俺はもう部活を決めていたから、勧誘を受けてもそれに応えることはできない。  でも、なぜかほっとけなかった。 「あの、きみ……」  声をかける。  すると彼女が振り返った。  遠目にはわからなかった。  その子は――まるで女神のような女の子だった。
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