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エピローグ
城も屋敷も、すっかり元通りになった。
三日三晩続いた祝いの祭りは、人生で一番楽しかったかもしれない。
城での生活に少しずつ慣れていった凜花は、ときどき屋敷に行っては料理係たちと賑やかな時間を過ごしたり、蘭丸と菊丸と庭で過ごしたりしていた。
そうしているうちに寒い冬を超えて、暖かい陽気が降り注ぐ春も終わりに近づいていた。
「凜花」
「はい」
ふすま越しに聖の声が聞こえ、凜花が返事をする。
部屋の中に入ってきた彼は、ふわりと微笑んだ。
「綺麗だ。今まで見たものの中で、なによりも誰よりも美しい」
素直に褒める聖に、凜花の耳まで朱に染まる。
花嫁衣装に身を包んだ凜花は、可憐な花のように美しかった。
赤い反物から作られた着物には、凜の花がいくつもあしらわれている。
凜花の顔が真っ赤になったことによって、凜の花がいっそう映えた。
白い肌とは対照的な口紅が塗られた唇は、まるで彼を誘っているようだった。
「このまま誰の目にも触れない場所に閉じ込めておきたいくらいだ」
「ッ……」
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