一章 千年の邂逅

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顔を洗って歯磨きを済ませ、お弁当箱に昨夜の夕食のおかずの残りを詰めていく。白米に梅干をひとつ乗せ、作りたての卵焼きも二切れ入れた。 残った卵焼きを摘まみながら食パンをトースターに放り込み、お気に入りのグラスに作り置きのアイスティーを注ぐ。 服を着替えると、ちょうどトーストが焼き上がった。バターを塗ってお皿に載せ、グラスとともにローテーブルに運ぶ。 毎日代わり映えしない朝食はあまり進まず、アイスティーばかりが減っていった。 気も体も重いけれど、朝の時間は慌ただしく過ぎていく。出勤時刻が迫っているから、嫌でも動き出すしかなかった。 凜花は、メイクをあまりしない。 日焼け止めを塗ってパウダーを重ね、色付きのリップを塗るくらい。 同年代の子たちと比べると地味なのは自覚しているが、基本的にこれで終わり。 あとは、背中の下まで伸びた色素の薄い黒髪をブローしてヘアオイルを塗るだけ。 身支度に必要な時間は、およそ十五分。朝食の後片付けを入れても、起床から出発まではだいたい一時間あれば足りる。 バッグを持ち、最後に戸締りを確認してから普段通りに家を出た。
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