一章 千年の邂逅

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弁償しなくてはいけないとわかっているのに、わざわざ自ら制服を切り裂くバカがどこにいるだろうか。 シャツ一枚とは言え、制服ともなれば安価ではない。 ひとり暮らしで生活に余裕がないこともあり、凜花は必死に事の始終を説明して無実を訴えたが、彼は『いくらなんでもこの状態で再支給は無理』の一点張りだった。 凜花以外でロッカーの鍵を管理しているのは、所長だ。 まさかとは思ったが、制服を見せたときの彼の顔は驚きでいっぱいだった。そのため、犯人ということはないだろう。 そもそも、凜花にはこんなことをする人物に心当たりがあった。 もちろん、所長以外に……という意味で。 ただ、証拠はなく、本人に話しても知らないふりをするのはわかっている。 誰ひとり味方がいない状況では、自分が不利になるのも目に見えていた。 結局、凜花はシャツ代を支払い、新しいものを購入した。 さらに二週間後、今度は制服のスカートがマジックでグチャグチャにされているなんて思いもせずに……。
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