459人が本棚に入れています
本棚に追加
/210ページ
シャツよりも高価なスカートを弁償すれば、凜花の生活は一気に苦しくなる。
普段から無駄遣いはしないが、月々の貯金は微々たるもの。全財産だってたいしたことはない。そこから補填するとなれば、〝痛い出費〟では済まされない。
シャツのときと同じように訴えたが、故意にスカートを汚したのは明らかで、所長の返答は二週間前となんら変わらなかった。
以来、シミ取り剤を持ち歩くようになったのだが、はっきり言ってこの程度のことでは予防にも解決にもならない。
(よかった……。取れた……)
それでも、シャツにシミがつかなかったことに安堵する。
濡れたシャツをタオルで挟んで水気を吸い取るようにすれば、まだ湿っているが着られないことはなかった。
(こんなこと、いつまで続くんだろ……)
考え出すと気が重いが、今はデスクに戻るしかない。
昼休憩はあと十五分しかなく、コーヒーに浸されたお弁当を片付けなくてはいけないのだから。
重い足取りで事務室に戻った凜花は、自身のデスクを見て目を見開く。
コーヒー塗れのお弁当箱が、ひっくり返っていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!