二章 天界と下界

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今させてもらえることと言えば、屋敷や敷地内を回るくらい。 広い屋敷は一日では回り切れず、二日かけて探検した。庭はさらに広く、未だに一番端まで見られていない。 よく敷地面積を東京ドームで例えたりするが、いったい何個分なんだろうと考えたところで答えはわからなかった。 そんな風に過ごした四日間は、意外と退屈せずに済んだ。 ただ、凜花が動けば必ず桜火を始め、蘭丸と菊丸もついてくる。 部屋の中ではともかく、どこへ行くにも護衛代わりに三人が傍にいる。そのため、さすがに申し訳なくなって、今日は朝からずっと部屋の中にいた。 (なんだかニートみたいな生活だな……。今日って何曜日だっけ?) 天界には曜日という概念はないらしく、そろそろ曜日の感覚がなくなりそうだった。 こんな生活をしていたらダメ人間になってしまいそうで怖い。 天界にいることは一応納得したが、せめて仕事くらいはしたい。 下界のようにお金がもらえるのかはわからないが、天界にも通貨に代わるものはあるだろう。 金銭があれば、少しは自由になれるかもしれない。 (仕事は難しくてもバイトってできないのかな?) そんな風に思い至り、凜花は聖が帰宅したら直談判することに決めた。 ところが、この日彼が帰ってくることはなく、直談判どころか話す機会すらなかったのだった。
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