0人が本棚に入れています
本棚に追加
3
以上が知り合った経緯である。
その後、元々なかった居場所に再び行くこともなく、俺は無事に不登校児になった。退学処分になると思いきや、クラスメイトが校長に直談判したらしく、理由が理由なために休学扱いになった。奴らにとっての贖罪のつもりだろうか? 今は授業を受けない分、学校から送られてくる課題をこなす日々だ。
担任は校長に着服の件がバレ、めでたく懲戒免職になった。
今は昼間に課題をやりつつ、成園のアパートの草抜きのバイトをしたりして生活している。なかなか充実した毎日だ。
成園は自分が探偵役になっていたことを自覚していないらしい。さっき「探偵にならないのか?」と成園は俺に訊いたけど、成園が探偵なのだから、俺が探偵を目指す理由はあるまい。
俺が助手として色々聞き回ったりしてネタを集めれば、成園が便秘になることはあるまい。いちかさんも泣かなくて済む。
ナポリタンで満腹になった成園は、満足そうな顔をしている。
カウンターの明かりが消えた。とうとう看板の時間らしい。
「出るで」
成園を起こし、会計をする。
「今日は夏貴の奢りで!」
「殺すぞ」
店を出ると、吐息の輪郭がわかるほどに冷え込んでいた。
「今年はとんでもない一年やったわ」
「そうかい? 私は色々新鮮だったよ」
そう言って成園は笑った。白い息が流れる。
古墳の周りの道を歩き、見慣れた赤煉瓦の建物に着いた。
「じゃ、また」
「おう、ほな」
学ランの防寒力は低かったみたいだ。背中から冷え込む。
「あ、そうだ。夏貴ー!」
アパートの玄関前にいた成園が振り返る。
「良いお年を!」
「声でかいわ! 近所迷惑やろ! ……良いお年を!」
手を上げて振り返る。来年は平穏な生活を過ごせたらいいな。
社会不適合者の俺は、澄んだ夜空に輝くオリオン座にただただ願うばかりだった。
最初のコメントを投稿しよう!