なりたかった者

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「澪(みお)がなれるわけねぇじゃん」 「ってか、お前が目指していいもんじゃなくね?」 「ほんと、それな。馬鹿じゃねぇの?もっと真剣に考えれば?」 「じゃあな、ブス」 同じクラスの女子が澪を罵り、笑いながら教室から立ち去って行った。 「はぁー」と深くため息をついた。 すると、ガラガラとまた扉が開いた。 振り返るとそこには学校一の美人と言われている紗海(さな)立っていた。 「あれ?澪ちゃん。どうしたの?」 澪に近づいてきた。 「紗海さん?いえ、ちょっと...」 紗海が澪の顔をじっと見つめた。 「目、真っ赤だけどどうしたの?」 「な、なんでもないです」と澪はそっぽを向いた。 「ほんとに?絶対なんかあったでしょ?私で良かったらなんでも聞くよ」 紗海は優しくて、本当に同級生と思えないくらいのお姉さんで話やすい。 だけど、また話を切り出したら笑われる、いじめられるんじゃないかって澪は少し怖かった。 そんなことを考えていると、ガラガラとまた扉が開いた。 「おっつーす!あれ、紗海に、谷崎さんじゃん!どったの?」 急に現れたのは、クラス一の人気者である瑠美(るみ)だった。 「瑠美。えーと、澪ちゃんと真剣な話」と優しく微笑みかけた。 「なるほどね。僕も混ざったまずい感じ?」と駆け寄って澪をじっと見つめた。 「大丈夫...です」と顔を少し下げた。 「大人しくしてなさいよ、瑠美」 「分かってますっす!」と歯を見せて笑った。 「ごめんね、澪ちゃん。で、ほんとになんもない?もしかして、倉崎さんとかになんか言われた?」と首を傾げ、真剣な眼差しで澪を見つめた。 「倉崎か...。なるほど、なるほど。僕が一回占めてこようか?」と手の関節を鳴らした。 「いや、待って。澪ちゃん、私達を信じて話してほしい」と澪の手を優しく握った。 「わ、わかりました。あ、あの...。宿題で将来の夢ってあったじゃないですか…。それで、倉崎さん達に見られてしまって。からかわれてしまったと言いますか...。言われて、悔しくて...」と唇を噛み、ぐっと手を握った。 「よければ、その澪ちゃんの夢聞かせてくれないかな?私達で良ければ聞くよ。ちゃんと。絶対に馬鹿にしない、笑わない」 紗海と瑠美の真剣な目を見て、ごくりと唾を飲みこんだ。 「分かりました。私の将来の夢は、自分の書いた小説を広めることなんです。ま、全然才能
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