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三年後、日本の田舎にある、とある静かなカフェ。
私、花宮さとりはこの場所でとある人物と待ち合わせしており、一人でコーヒーを飲みながら、膝に座ってきた猫にブラシをかけてあげていた。
視線の先には掃除ロボットに座っている犬がおり、まるで石像のようにピタっと静止して舌を出している、これがこの店の名物的な光景である。
「ちゅうもん」
「え?」
「ちゅうもんして」
「ああ、すみません娘が…こらーだめでしょー」
「かわいい…」
更に看板娘もかわいいこの店は最近話題になっており、夫婦経営で美人の奥さん目当てで来る人もいるのだとか、奥にいる不愛想な夫は何だかんだで優しい人らしい。
「ちゅうもんー」
「じゃ、じゃあもっと注文しちゃおうかな…」
「なにしてるのよ…」
「…ミアさん!?いつから!?」
「少し前から正面に座ってたわよ…」
ちなみに待ち合わせていた人とは明月院ミアであり、彼女とはあれから三年ぶりの再会になる、完全に自分のことを忘れられていると思った彼女は、残念そうにため息をついたのだ。
「ちゅうも…」
「あ、私はランチセットの日替わりパスタとオムカレーとフレンチトーストと…」
「あっちいっ…て、へ?」
「あとフルーツパフェとカフェオレとバナナオレもお願いします」
「は、はい…すみませんが改めて注文の確認をお願いします…」
「…いつもこうなの?」
「まあね、もう慣れてるわ」
「あはは…」
怪物の登場に看板娘は店の奥に逃げていき、目を丸くする奥さんはせっせと動いて夫に注文を伝える、それなりに長くなるであろうその間に、私たちは積もる話を始めた。
「ところであれからどうだったの?」
「どうって…高校三年生は大変だったけど…」
「まあ一年で問題児も入ってくるものね」
「友成くんの弟がね…」
「あいつ弟なんていたの?」
「お母さんは違うらしいんだけど清くんにそっくりで…」
「そっくりってまさか弟くんも…?」
「真面目な子なんだけど窓ガラス割った時は驚いたなぁ」
「ああそっち…」
「あ、そういえば安座間くん高校の卒業から急にいなくなっちゃったよ」
「ふふっ、彼はこっちの大学にいるから安心して」
「えー?事件かと思ってみんなで結構捜したのに…」
「帰ったらきつく言っておくわ」
「一年間も捜したんだよ…」
「そういうとこ最低よね分かるわ」
何だかんだみんな元気そうだと判明して私たちは安堵した、明月院ミアも早期に日本に来れたということはそういうことなのだろう、心から幸せそうな彼女の笑みを見て、野暮な質問はやめようと思えたのである。
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