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2.友成清の野望
休日。
隣町のショッピングモールに、私と友成清は約束通り二人きりで来ていた。
一応秘密の集まりということで隣町を選んだわけだが、私は待ち合わせの駅からここまで、知り合いがいないか怯えていた。
ちなみにデートという名目だが、その目的は至って大真面目な「私の改造」であり、数々の女友達の相談に乗ってきた彼は、私におしゃれを教えている最中だ。
「まずは頭から合わせようか」
「…髪型……か…」
まず真っ先に変えたのは髪型で、適当に伸ばした髪をゴムで束ねていただけのそれを、美容院の女性店員さんは顔の輪郭が見えるように次々とカットした。
彼曰く「顔が良い私」はもっと大きく見せるべきであり、重苦しいロングからまるでOLのようなショートになった私に、友成は店員さんと「うんうん」と頷いた。
正直ずっとロングの重みに慣れていた私は落ち着かずに困り顔をするが、その顔も可愛いと言いたげに友成はグッドサインを出した、初々しい私に店員さんは微笑むばかりだった。
「は、恥ずかしい……」
「何言ってるのさ。次行くぜ次」
躊躇いもなくレディース服の売り場に突撃していく彼は、私の体をジロジロと見つめながら脳内でイメージを構築しており、どうやらシンプルなワンピースを着る私にかける言葉を選んでいるようだ。
爽やかでスタイリッシュな彼のことだから、キツめのジーンズでも履かされるのかと思っている私だが、彼の頭の中にある言葉はまったく違うものらしい、直後にとんでもないことを言い放った。
「まず花宮ちゃんってさ、おっぱい大きいじゃん」
「………」
「でも細身で足はそんなに長くないし…って帰らないで!」
「………で?」
「だから俺は普通にワンピースが一番合ってると思うんだよね」
「このままで良いってこと?」
「まあそれでもいいんだけど…」
「(絶対良いと思ってない…)」
「もっと胸を強調するように腰周りが引き締まったものにしよう」
彼が何着か選んでくれた服は明らかに腰回りが細いものであり、同じ服を長期間に渡って着る私は難色を示す、そもそも足はともかく胸周りなどあまり見られたくないというのが本心だ。
「太ったら着れない……」
「だから価値があるんじゃないか。とりあえず買ってくるから着てみなよ」
「買う?…試着しないの?」
「俺は見ただけでサイズが分かるから大丈夫」
「………」
「それはキモいって顔かな、あはは」
ちなみに今日の費用は全て彼持ちであり、お坊ちゃんである彼は全ての支払いをカードでポンと済ませている、あまりお金を持たされていない私に気を遣う素振りもなく払う様子から、これが友成清の平常なのだろう。
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