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ショッピングモールのカフェ。
自分で言うのもなんだが古臭い花柄のワンピースから、まるで英国令嬢が着ていそうなワンピースに着替えた私は、腰周りに不安を抱えているというのに餌付けをされていた。
そんな私を穴が開くほど見つめる友成清は、「姿勢良いね」だとか「食べ方綺麗だね」と育ちの良さを褒めちぎっており、自分の目に狂いは無かったと言いたげにニヤついた。
段々と彼のことが気持ち悪く見えてきた私は文字通り見る目が変わり、今では彼と記憶にある中学生男子を重ね合わせて、ため息を吐きながら生気の無い目を向けていた。
もちろん彼はそんな目で見られると喜びを感じるもので、どうやら私と仲良くなれたと思っているらしい、決してそういう趣味があるわけではないと信じたいものだ。
やがて彼は自分のパフェを食べ終えると、ゆっくりとパンケーキを頬張る私に次なる話を始める、彼は重要な話をする時はちゃんと咳払いをして合図する、きっと体の中に二人の友成清がいるのだろう。
「そういえばクラスの同級生はどのくらい知ってる?少なくとも俺達の仲間の名前とかさ」
「もぐもぐ……」
「…まあ覚えてなさそうだから改めて紹介しておくと、あの女の子が二条菊花、あの眼鏡くんが倉井ヒカルで…」
「……眼鏡くん?」
「ああ、ちょっと影薄い人だから認識されてなかったか…後はあの安座間大牙で、側近四天王というわけさ」
「側近四天王……」
「特に俺と倉井くんは他のグループと仲が良くてね。俺は女の子軍団に、倉井くんは男の子軍団に顔が広い。当面の目標は倉井くんとの友達関係かな」
「大丈夫かな……」
「大丈夫大丈夫、倉井くんは別に花宮さんに悪い印象は持ってないよ。ただかなり癖が強い人だから、花宮ちゃん的に苦労するかもだけど」
「………」
「んーまずは女の子同士、菊花ちゃんと親睦を深めるべきかな。あの子はちょっと臆病だけど、わりとチョロいからすぐ仲良くなれると思うぜ」
「ひどい言い方ね……」
二条菊花、倉井ヒカル、その二人を取り込むことが計画の第一歩らしい、何だか利用するみたいで乗り気ではないが、クラスでの立場を確立するという意味ではどのみち挨拶は必須である。
「……安座間くんは?」
「大牙は今ちょっと荒れててなぁ…そもそも花宮ちゃんに協力しないって言ってるんだ。元々クラスでは孤立気味だし、仲良くなる必要は無いけどな」
「そう……」
「でもまあ、花宮ちゃんもいつかは話す時が来るかもだぜ。何か雰囲気似てるから、意外と仲良くなれたりして」
「無理でしょ……」
安座間大牙、その存在を少し気にかけながらも、私はパンケーキを美味しく頂いて完食する、そしてふとメニュー表に記載されたカロリー表記を目にすると、友成に気付かれないように細い腹を指でつまんだのだ。
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