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私たちが二人を発見するずっと前から、先に気付いていたらしい二人は私たちを探していたようで、硬直する私たちをどうにか和ませていた。
二人はまず引き合わせようと努力してくれた友成に感謝を述べ、私のことは蚊帳の外で話を盛り上げた、友成の心配は杞憂に終わったようだ。
とりあえず私は空気を読んで他人のふりをして、普段しないような笑顔を作った、そもそも二人は、私が私であると気付いていないかもしれないから。
私が花宮さとりであると知れたら、最悪二人は逃げるようにどこかに行ってしまうだろう、そう配慮しての判断だったが、それもまた私の杞憂に終わる。
「花宮さん」
「………!」
どうやら二人がわざわざ会いにきた目的は友成ではなく私にあるようで、奥村という女子生徒の方が気付いていると言いたげに名前を呼んだ。
服はともかく髪型が大きく変わっているのに気付かれるとは、どれだけ普段の私は異彩な雰囲気を放っているのだろうか、私は少しショックを覚える。
そして引田という男子生徒が、何故かほんのり赤い顔で緊張しながら私と目を合わせると、若干前傾姿勢の二人はゆっくりと背筋を伸ばしていく。
瞬間、二人は目を閉じて30度くらいの角度で頭を下げると、私に対して贈るべき言葉を躊躇わず差し出した、それは謝罪であり感謝の気持ちだったのだ。
「あなたのことを避けていてすみません…」
「あの…そんな…」
「僕たちは絶対に謝らなきゃいけないんです」
「ど、どういうこと…?」
「え?まさか二人が噂を流した…?」
「…そうじゃなくて、僕たちがこういう関係になれたのは花宮さんのおかげなんです」
「………?」
「…私、花宮さんの隣の席でその…視線が集まるのが嫌で逃げるところを探していて…」
「あーそういうこと…」
「………」
「だからその…不快に思われるかもしれませんが改めて言わせてください…今まで本当にすみませんでした」
彼女の言う通り、私は少し不快な気持ちになったが、正直に話して謝ってくれたことに対しては認める他ない、私も同じ状況になれば同じように避けていたと思う。
あの状況がずっと続けば、決して許されない呪いになっていたかもしれないが、私もこうして友成清という男によって救いを受けている、二人を許さない権利は今の私には無いだろう。
「…頭を上げてください…もう気にしてませんから」
もちろん気にしていないは嘘だが、これ以上この二人に追及するつもりなんてない、確かに加害者かもしれないが、あまり関係ない二人を突いたところで何も変わらないと思うから。
「……かわいい」
「………」
「ああすみません…また不快な気持ちに…」
「はっはっは」
初めて目が合う彼女にかわいいと言われた私は目を細める、そう言われて嬉しいと思うことを今日やってきたはずなのだがまだ慣れない、とりあえず私は笑う友成を睨みつけると、革靴を指差して買わせたのだった。
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