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12月31日、世間で言う大晦日の日。
正月元旦新年に向けて、それぞれがその年の最後を過ごす日。
新しい出会いに向けて休む日であり、人によっては集まって騒ぎ立てる日。
また年越しそばだったり、地域によってはおせち、もしくは豪勢な食事を楽しんだりする、そんな日でもある。
こんな日に私たちは空港に集まって、新天地に旅立つ私を見送ってくれていた。
これが今生の別れになるかもしれない花宮さとりは、誰よりも悲しそうな顔で手を握ってくれた。
短い付き合いだったし、別に死ぬわけでもないのだが、この空港という場所がそういう空気にさせるのだろう。
かくいう私も悲しい気持ちで、彼女たちとはもっと長く一緒に居たかった、そう思うのが嫌で避けていたのにこの始末だ。
それでも不思議と清々しい気持ちなのは、花宮さとりのおかげだろう、私のために過剰なまでの償いをしてくれた彼女には、感謝してもしきれないものだ。
「まあ、結構楽しかったわ」
「明月院さん…」
「これがただの友達関係ならもっと楽しかったけれどね」
「ご、ごめん…」
「………」
ついつい面白半分で皮肉を言ってしまう私だが、今ばかりはふざけるべきではなかったと反省する、これが最後なのだと忘れてはならない。
「…ありがとう」
「え?」
「いいえ、ごめんなさい…あなたに難しいことばかりを押しつけて」
「そんなこと…」
「………」
「ないけど…」
感謝と謝罪、花宮さとりにはもっと伝えるべき言葉がある、そのうちのほとんどは恥ずかしさで出ないが、これだけは絶対に伝えなければいけない。
「この数か月、本当に楽しかった…本当に幸せだった。これも全部きっとあなたのおかげ…」
「………」
「もう感謝を述べるくらいしかできないけど、償いなんてどうでもいいくらい、あなたには恩ができたわ」
「恩だなんて…」
明月院ミアではなく一人の友達としての気持ちを、彼女にはっきりと伝えなければならなかった、最後の別れくらい私たちは本当の友達で在りたかったから。
「だからその…今日からあなたと私は友達で…」
「………!」
「花宮さん…ではなくさとりさんって呼んでも…」
「じゃ、じゃあ私も明月…じゃなくてミアさ…」
「あはははは!」
そんなムードも友成の大爆笑で台無しになる、釣られて二条も笑いそうになり、倉井と安座間はそれぞれ別の理由で呆れて、ため息をついていた。
「なに笑ってんのよ」
「いやいや、今更かって思うでしょ」
「せやなぁ」
「だからって笑うのは良くないね」
「すまんすまん、我慢できなくて」
「はあ……これだから友成は……」
「最後の言葉がそれでよかったのか?」
「はあ?あんたまでなに?」
「せめて連絡先くらい交換したらどうだ」
「余計なお世話よっ!」
「ふふふ」
いつもの調子に戻ってしまうと、悲しみなんて忘れて花宮さとりも笑ってしまう、まあこんな軽い感じの別れが私と彼女にはお似合いなのだろう。
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