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ショッピングモールから駅に向かう道中。
あれから更にお金を使わせて、かわいいバッグを手に入れた私は、気持ち悪い笑みを浮かべる友成から目を逸らしながら、二人で帰路についていた。
そういうものが趣味なのかと聞かれても、だからどうしたと言わんばかりに両手で抱えて、お前には触らせないという固い意思を見せつけていた。
友成は心底楽しそうに笑いながら隙を見て手を伸ばす、もはや彼は私のことを弄りがいのある玩具としか見ていないようで、それだけ距離が縮まったということなのだろう。
「しかし有意義な一日だったね」
「そのために一体いくら使ったのかしら…」
「金額じゃないさ、もう仲間をゲットできちゃうなんてラッキーだ」
「仲間……」
しかし「自分を変える第一歩」、そのつもりで今日ここに来たはずだったが、思わぬイベントに遭遇してクラスでの仲間を手に入れた、順風満帆と言うべき一日だった。
まあ自分を出汁に使われて結ばれたカップルを、私はまだ不快に思っているし認めたくもないが、これからの利用価値を考えれば十分に我慢できる範疇ではあった。
だがそれでも不満そうな顔をする私に、友成はしばらく考察をしてから切り込んだ、今日一日でだいぶ私の扱いが慣れてきた彼はそれを確かめるように、腹の内に秘めた言葉を表に出したのだ。
「やっぱり嫌かい?」
「気分の良い関係ではないわよ」
「実質、弱みを握れてるんだからいいじゃないか」
「それも含めて気持ちが悪い」
「花宮ちゃんは優しいんだね」
「…何でそうなるのよ」
「だってそれってあの二人を想っているからこその感情だろ?」
「………」
「つまり俺と花宮ちゃんは似た者同士ってわけさ。ああ、俺が優しいって意味じゃないからね?」
「意味分かんない」
私は彼の言っていることが分からないが、彼が何を考えて生きているかは理解している、彼が胸に抱く理想がどんなものであるか。
いつになく真剣な表情になった彼が何を言うつもりなのか予想できた、これほど分かりやすい男子は世の中にそうそうないだろう。
「…俺の野望はさ。俺の周り全員が仲良しの世界なんだ」
「子供みたい」
「みんなが自分らしく居られて、みんなが尊重しあって認め合う、そんな空間で生きてみたいんだ」
「道徳の教科書みたいな夢ね」
ちなみに私は決して彼を馬鹿にしているわけではない、それを笑えるのは子供と何も考えていないひねくれ者だけである。
ただ私はそれが実現することはあり得ないと思っているだけだ、もしそれができるのであれば今の世界は成り立っていないだろうから。
「しかし大牙と全く同じこと言うね」
「はあ?」
「やっぱり俺は花宮ちゃんと大牙、仲良くなれると思うなー」
「……ふん」
再び気持ち悪い笑みで弄ばれると私は目を逸らす、彼の野望なんて地に墜ちてしまえと、心から呪って微笑みながら。
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