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その日から、私はクラスの中で避けられ始めた。
誰一人として目を合わせようとせず、当然話なんてしようともしない。
休み時間になれば、周りの席の生徒は逃げるように散っていく、まるで何かの感染者のように。
昼になれば一人でお弁当を食べる私を、同級生は遠くから監視する、居心地が悪いことこの上なかった。
「あの……真中さん……」
「……っ!」
試しに唯一の友達である真中という女子生徒に話しかけたが、言葉をかけた瞬間に逃げられてしまった。
そんなに仲が良いと言える関係でもなかったが、やはりそんな対応をされると悲しくなるものである。
彼女には新しい友達ができたそうで、二人の女子生徒は彼女を守るように、私のことを精一杯睨み付けた。
広まっている噂がどんなものか知らないが、きっと想像を遥かに超える内容なのだろう、彼女とはもうこれっきりのようだ。
「花宮、ちょっといいか?」
「……はい」
そんな私と対話を望む唯一の人間は担任の教師であり、如何にも熱血教師と言わんばかりの彼は”騒音”とあだ名で呼ばれている。
未だ活力が瞳の奥に見える男性教師は、私を憐れんでいるのか真実を問いただした、ちなみに私は声の大きい彼が苦手である。
「あの噂、本当なのか?」
「…内容を知りません」
「ああすまん…何というか、お前は偶然居合わせただけなんだよな?」
「付きまとわれていただけです…」
「やっぱりそうだよな…よし、任せとけ。ホームルームで俺がガツンと言ってやるぞ!」
「はあ……」
その男性教師はきっと正義感から行動に及んだのだろう、まだ経験の浅い彼は自分でどうにかできる問題だと甘く見ていた。
「お前ら、花宮を根拠もなく悪者みたいに扱うなよ!」
そう言えば子供は簡単に説得できると思い込んでいた、それが逆効果になるかもしれないなんて考えもしなかった。
「史英学院の生徒として相応しい振る舞いをするように!」
「………」
それから同級生の私に対する当たりが強くなる、明らかに嫌悪感を示すようになり、先生に告げ口をするということは彼、彼女らにとっては罪深いことなのだろう。
そもそも”騒音”は単純にやかましいと嫌われており、そんな彼が味方になったところでなんだという話である、むしろ私にとってはデメリットでしかないのだ。
元々この教室は居心地が悪いがそれが更に悪化する、しかし学業の成績だけが取り柄の私は不登校になるわけにもいかない、段々と締め付けられていく首元に不快感だけが増していった。
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