1.花宮さとりの復讐

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次の日も、その次の日も、私に対する注目は消えなかった。 席は明らかに距離を離され、ふと目が誰かと目が合うと、聞こえるくらいのひそひそ話で悪口を言われた。 ちなみに授業でやってくる教師たちも深く突っ込んだりはしなかった、みんなあの事故と噂のことを知っていたから。 私が避けられていることを知っても、何かをしようと思う教師は騒音以外にいなかった、彼らは権力者が多い私たちの親が怖いのである。 今更だがここ史英学院は、お金持ちの子供ばかりが通う高級私立校だ、故に下手に逆らえば一発退職と上に脅されているのだろう。 そういう学校だからか、子供たちの間でも生まれの格差みたいなものは存在し、自らの家柄を気にして立ち回る生徒も一定数いた。 私が疑われて排斥されているのも、私の家がこの学校では普通以下の稼ぎで、明月院家がトップを競うほどの名門だからというのもあるだろう。 更に言えば私は中小までは普通の学校に通っており、中には私のことを「玉の輿を狙う薄汚い女」と見る人もいる、実際に私の親はそう考えて入学させたに違いない。 「………」 しかし無視だけならば、私の心はそこまで傷付かなかった、誰とも話さずに過ごしたことなんてこれまで何度もある、むしろその方が落ち着くまである。 私にとって大きなストレスなのは監視の目と悪口であり、特に真中さんの新しい友達が私を嫌っているようだった、一つ悪口を認識すればその他全てが同じ言葉に聞こえた。 気付けば別の同級生のひそひそ話も、私への悪口を言っているように聞こえ始めていた、それと同時に向けられる視線の全てが、睨み付けられているように感じていた。 「(また何か言われてる……)」 その中には被害妄想もあると頭では理解していても、強いストレスが拒絶して最悪の悪口へと変換した、言葉は頭の中に残り続けて何度も何度も私に言い聞かせた。 誰かに見られる度にそれは鳴り響き、もはや何も言われていないのに言っていると錯覚した、日に日に症状は悪化して負の感情が増していった、そんな私を周囲は更に避けるようになった。 感情を無にすることに必死で、授業にも集中できなくなった私は本来の自分すらも失いかけていた、恐らく次は自分を保つために他人を攻撃し始めるのだろう、そうなれば取り返しがつかないと誰かが囁く。 何度ホームルームで呼びかけても一向に改善されない状況に、”騒音”の私を見る目も変わっていった、何がどう変わっているのか説明もできないが、私は彼を少し怖いと思い始めていたと記憶している。
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