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恐らくみんな私のことが怖いのだろう。
みんな私のことを知らないから、それで余計に怯えているのだろう。
今の私はきっと得体の知れない化け物に見えているのだろう、歯向かえば明月院さんと同じ目に遭うと信じてやまないのだろう。
しかし残念ながら私に弁解する術はない、そもそも人前で話すことに慣れていないし、人と仲直りなんてしたこともない。
これまでの人間関係は全てなるようになれで済ませてきたし、生真面目な私は同級生と遊ばないのが日常だった、同級生との接し方すら知らなかった。
「胸が……痛い……」
闇の中で私はあれから受けたストレスに日々苦しんでいる、孤独に慣れているとはいえ、あんな扱いをされれば傷付くものである。
当然、私はロボットではないし仙人でもない、心が傷付けば苦しいし涙すら出てくる、泣こうが状況は変わらないと理解していても。
「……ぐすっ……」
厳格な親は助けてくれないと知りながらも、当たり散らすように救いを求める、求めては消えて求めては消えるこの世界で。
「……何泣いてるのよ」
「明月院さん……?」
やがて目の前に寝たきりのはずの彼女が現れると、彼女は怒りと嫌悪感に満ちた顔で私を睨み付けた。
「あなたのせいで私は酷い目に遭ったのよ」
「違う……私は何も……!」
そして私の態度に我慢しきれなくなると、彼女は私の胸ぐらを掴んで思い切り揺らした、見たこともない真っ黒な顔で。
「返してよ…返してよ…!入れ替わりなさいよ…!」
「無理よ……どうにもできな……」
「じゃああなたも同じ目に遭いなさいよ…!そうでもしなければ不平等でしょ…!」
「私は関係ない……!あなたと私は……!」
「忘れることなんて絶対に許さないんだから…!!」
それが夢だと気が付く頃には全ての記憶がぼんやりと消えていく、あの事故に関する息苦しい夢を見たことだけは覚えている。
起床して光の漏れるカーテンを開け、今が翌日の朝であることを認識した私は、クローゼットの隣にある立ち鏡に我が姿を写し出した。
そして顔を覆い隠す前髪を横にかき分け、ほくろがチャームポイントの意外と大人びている顔を確認すると、まぶたを閉じて瞑想する。
そして家の中でしか使わない髪留めを手に取ると、私の中では大きな決心をする、今まで他人に見せることのなかった顔を日の下にさらす。
「これで……いこう」
これで何か変わるとも思えないが、自分に自信をつけることはどのみち大事なことである、何かが変わるはずだと自分に言い聞かせながら、憂鬱な登校へと臨んだのだ。
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