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いつもは重く垂らしている前髪を留め、きっちりと留めている上着のボタンは開け、とんでもなく長いスカートを短いのに履き替えた私は、いつものように一人孤独に席に座っていた。
容姿が激変した私に周囲は驚いたようだが、もちろんそれで印象が良くなることなんてなく、どうしたと言わんばかりに無視は継続される、中には私の変化に嫌悪感を示す者もいた。
私の変化を好意的に受け止めたのは担任の教師である”騒音”ただ一人で、彼は私を呼びつけると秘密の話に使われることの多い視聴覚室に連れ込んだ、そしてそこで本性を剥き出しにした。
「なあ花宮……やっぱりお前って本当はかわいいよ」
「はあ…?」
「良いからだしてるし……もっと大人になったら絶対に美人になる」
「はあ……」
「卒業したら俺と付き合おう……いや今からでもいい」
「……はあ?」
「一生面倒見てやるよ……俺が全部責任取ってやるからさ……!」
「……ちょっと……近寄らないで!」
「大丈夫だ……ここは誰も来ないよう使用許可を……って、お、おい!逃げるなって!待てよ!」
「……嫌!!」
どうやら騒音は私という女に目をつけていたらしい、前から視線がエロいとか何だと生徒に酷いことを言われていたが、勘違いではなく嘘偽りのない真実だったようだ。
逃げる私を騒音は捕まえようとするが、廊下に出たところで同じクラスの友成清にばったり会うとピタリと止まって咳払いをする、こういう時に偶然居合わせるのが友成という男で、彼は疑いの目を騒音に向けた。
「ち、違うぞ!?俺は何もしてないからな!?」
「何がです?」
「なあ花宮…ってああくそ!逃げられた!」
「…はあ……」
今まで人間関係を避けてきただけあって逃げ足の早い私は既に姿も形もない、友成はこの場から去る騒音にため息を吐きながら、私が逃げていった方を振り返る、どうやら彼は彼なりに思うところがあるようだ。
「………」
こうしてここにいるのも実は私の後をつけてきたからであり、騒音に良からぬことをされるのではないかと察したからである、クラスの女の子によく相談されている彼だからこそ未然に防ぐことができた。
「いつまでもこのままじゃいけないよな…」
ただ人の不幸が嫌いで仕方がない彼は、自分で何かを始めるのは苦手とはいえ私に対してとある決心をする、明月院ミアの良き理解者でもある彼は、自分にしかできないことだと解っていた。
「……気持ち悪い」
私は彼がそんなことを思っているとは知らず、今になって内から湧き出てくる恐怖に体を震わせていた、もしあのまま騒音に捕まっていたらと思うと、最悪な結末しか思い浮かばなかったから。
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