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翌日、大きく変化した教室内は戸惑いと驚きに包まれており、その中心にいる私は朝から理解が追いつかなかった。
今まで誰も寄りつかなかった私の近くには、明月院ミアの周りにいた側近たちが居座っており、まるで私は彼女のようなリーダーとして扱われていた。
とはいえ側近たちはみんな明らかに無理をしており、無視の対象だった私に対して緊張が隠せなかった、近くにいるのに誰も話しかけようとはしなかった。
「………っ!」
「あー待って待って」
過去最大級の居心地の悪さを感じる私は席を立って逃げようとするも、直後に友成清に呼び止められて座るように促される、困った顔をする私に彼は代表として説明を始めた。
「ミアちゃんに聞いたんだよ、花宮ちゃんって昔からの幼馴染みなんだろ?」
「え?」
「昔からよく思ったことを口にする仲で、あの時もただそうしてただけだって」
「明月院さんは……」
「ミアちゃんの友達なら俺たちは君を受け入れる。そういうことでこれからよろしくな」
「………」
私はあの時の話し合いはこういうことだったのかと理解すると、とりあえず困った顔をやめて、少し怒りが混じった不満そうな目を友成清に向ける。
「てかほんと、よくみたら美人じゃん」
「はあ」
「花宮ちゃんのこと、もっと知りたくなってきたよ」
「…………くせに」
「勝手に決めつけて無視したくせに」と小声で呟くが、何があろうと償うと決めている友成は止まらない、戦々恐々としている仲間たちを飲み込みながら関係をどんどん進めた。
「まずは今度、俺とデートしよう(…実は花宮ちゃんで記念すべき100人目!)」
「最低……」
「(…そこからどんどん友達作ってさ。このクラスの過半数味方にして、全て花宮ちゃん色に上書きしちゃおうぜ)」
「………」
それはつまり復讐というやつなのだろう、誰が流したのか知らない噂を真っ向から全否定してやるということなのだろう、彼はその手助けをしてくれるわけだ。
「悪くない提案だろ?」
「………」
「(復讐、したいだろ?)」
「…まあ…そうだけど…」
私にとっては恐ろしいくらいに好都合だが、その提案に乗るにはまだ勇気が湧かない、孤独に生きてきたコミュニケーション弱者が、いきなり沢山の友達を作るなんて無茶な話である。
「そうだけど……」
「………」
しかしそれでも精神的におかしくなりかけている私には、この悪魔の話に乗るしか選択肢がなかった、毒蛇に噛まれたのならその毒で血清を作るのが一番だ、その方法以外に今を変えることは不可能なのだから。
「……とりあえず囲むのをやめて」
「よし、決まりだ」
この日から私の奇妙な復讐劇は始まる、何を考えているか分からない友成清に手を引かれるまま、先の見えない暗闇へと足を踏み入れたのだ。
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