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夢の中。
正確には夢だと認識できてない、私だけの中に存在するもう一つの現実。
景色も人の顔もぼやけていて、前後の事象に整合性の取れない、とにかくよく分からない雲のような世界。
私はそこに存在するはずのない漫画の登場人物と話していたと思えば、唐突に舞台は教室に移り変わり、数学の授業らしきものを受けていた。
数学は苦手分野であり、内容の分からない授業に私は焦りを隠せず、「花宮さん」と名前を呼ばれると答えようにも声を出せなかった。
全く同じではないが、かつて体験したことのある気まずい時間、しかし苦痛を感じる暇もなく、何故か一瞬で授業が終わるとまどろみの中へ引きずり込まれた。
「………?」
再び目を開けるとそこは周りに誰もいない静寂の世界、まるで昨日の友成清の提案が嘘だったかのような孤独を感じると、やがて私の目の前に彼女が現れた。
明月院ミア、私の友達ということにされた彼女は相変わらず不満そうに私を睨み付けていた、そして彼女は二人だけの世界で私に感情をぶつけたのである。
「どうして私のことを忘れたの」
「………?」
「私の居場所を奪って楽しい?私の仲間を奪って満足?」
「……まだ…」
「ねえ、どうして私のことを忘れたの?」
「…だから……」
「私とあなたは友達、なんでしょ?それなのにどうして?」
「……それは友成くんが…」
「私はあなたのことを絶対に忘れない」
「………」
「私はあなたのことを覚えてる、これからもずっとずっと」
「……やめて」
「あなたが私のことを思い出すまで、ずっとずっとこうしてやるんだから」
「やめてよ……!」
それが夢だと分かった時、私はどれだけ安堵したことだろう、見るたびに境が無くなっていく夢と現実に、どれだけ恐怖して怯えたことだろう。
明月院ミアのことなんてほとんど知らないのに、どうして彼女がそんなことを言う姿を想像できるのだろう、無茶苦茶な被害妄想をする自分にどんどん嫌悪感を抱いていく。
だがそれもきっと今日で終わる、終わらないかもしれないが良い方向に変わっていく、そう信じればまだ希望は抱ける、再び鏡の前に立って重い前髪を上げた。
「復讐……」
誰に対してやるか分からない復讐の二文字が、消えかけていた私の心に火を灯した、クラスでの友達作りは無理でも、噂を流した犯人だけは突き止めたい気持ちがあった。
その犯人をどうしてやりたいかは考えていないが、少なくとも私が奇異な目で見られることは無くなるだろう、私は元通りの生活に戻るために、変化を受け入れることを決意したのである。
「私は変わるんだ……!」
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