バケモノの花

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あの花が無くなった代わりに夜空に今までなかった星が見える様になりました。それは他の星と比べ物にならないほど大きく、あの花を思い出す様な虹色の光で輝いています。 不思議な事にどんなに厚い雲に覆われていても雨が降っていてもその星の輝きだけは見えるのです。 でも蜜を生み出してくれる訳ではありません。元気にしてくれる事もありませんし、国を豊かにしてくれるわけでもありません。 ただ美しく輝き、人々の心を癒してくれるだけです。 『王様の蜜』を作れなくなった国はみるみる貧しくなっていきました。 飢えで亡くなる人達も沢山でてきました。 バケモノに謝りに行った少女の家族は国を出て行く事にしました。もうこの国では食べていけないからです。少女は星を眺めると本を抱きしめて祈りました。 「どうか幸せで暮らしています様に」 少女は抱きしめていた本をそっと開きました。そこには、あの花が押し花になっています。その下には『バケモノの花』と書いてありました。 滅びた国に寂しくそびえ立つお城は、昔の様な煌びやかさは無くなっていました。 沢山いた兵士も使用人もいません。 お城の一番高いところにある重厚な扉の小さな部屋に王様はいました。 その部屋には沢山の金銀宝石がありました。そこに埋まる様に横たわる骸骨があります。 その姿は手を小さな窓に伸ばしている様に見えます。 「あぁ…あの美しい星が欲しい………」 そう言っていたのかもしれません。 小さな窓からは、あの大きな星が見えています。 星は滅びた国も優しく見守る様にずっと変わらずに輝いているのでした。 ー終ー
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