バケモノ

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バケモノ

これはバケモノの花が咲く前の時代のお話です。 小さな国に『バケモノ』と呼ばれている男の子がいました。 その子は林の奥にある湖の近くの小さな小屋にたったひとりで住んでいました。 バケモノと呼ばれる男の子は5歳児位の身長しかないのに首から上は大人と同じ位の大きさをしています。顔からはみ出そうなギョロっとした目の瞳の色は赤く、口は小さいのですがたまに見える歯は野犬の様に尖っています。しかも右と左の足の長さが違うので歩き方も独特でした。 『バケモノ』と呼ばれる男の子の本当の名前は誰も知りません。 バケモノは自分が大嫌いでした。皆、自分を見ると怖がるし気持ち悪がるので、人気の無い林の奥に身を潜め、外に出るのは皆が寝静まった夜だけと決めていました。 空一面に綺麗な星が広がっている夜の事です。 バケモノは家の近くにある湖畔に座り星を眺めていました。 「星はなんて美しいんだ。いいなぁこんなに美しくて」 バケモノはそう呟くと小石を湖に投げ入れました。 湖に映っている自分の姿が散り散りになるを悲しげに眺めていると、空から金色の塊が細い光の線を描いて湖に落ちてきました。 水面の上でその塊は金髪の綺麗な男の子に姿を変えました。 「こんばんは。なんで君は夜しか外に出ないんだい?」 綺麗な男の子の声は、まるでベルがなる様な澄んだ響きをしています。 「僕はとても醜いから皆んな怖がるし嫌がるでしょ?だから誰にも会わないように夜だけ外に出る事にしているんだよ」 「君が醜い?」 綺麗な男の子は不思議そうに首を傾げました。
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