王様

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王様

この国の王様は若く美しく、国民にも慕われていました。 そして何よりも美しい物が大好きでした。 金、銀、宝石、また豪華な衣装、お城の中はそれはそれは煌びやかです。 そんな王様ですから、今まで見たこともない宝石の様な花があると聞くと直ぐにその花を全て持ってくる様に家来に命じました。 湖の側の美しい花畑は殆どお城の者が持って行ってしまったのです。 この花が大好きだった人々は悲しみ、そして荒れ果てた花畑には誰一人として来なくなりました。 そこに吹いてくる冷たい北風が泣きながら潰された花を優しく湖へと飛ばしていきます。 バケモノはその風景をただ見つめていました。 悲しいのでしょうか? 悔しいのでしょうか? それは、いつも男の子を見ていた湖にも、今吹いた北風にも分かりませんでした。 お城の庭には国中の庭師が集められ、あのバケモノが一生懸命育てた美しい花々が次々と運ばれては広い庭一面に花を埋めていきました。 しかし不思議なことにお城の庭の土に埋めていくと直ぐに花は黒々とした汚い色に変わり、あの優しくて柔らかな香りは鼻がひん曲がる程の酷い異臭を放つのです。 たちまちお城の中は汚い花から出るドブくさい臭いが広がっていきました。 王様は怒り狂い、植え替えたばかりの花を全て湖へと捨てさせました。
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