王様の蜜

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王様の蜜

この国は宝石が沢山手に入る様になり、お城の中は今まで以上に豪華になっていきます。 でも国民は貧しくなっていました。 若い働き盛りの男の人は戦争で沢山死んでしまったうえに、残った僅かな男達は宝石を掘る為に連れていかれたので、働くのは年寄りと女や子供ばかりでしたし、何より掘られた宝石の価値のある物は全て王様の物になっていたからです。 国民はその日食べるものも困難になっていました。 皆が飢えで苦しみ始めた頃、蜜の入った小瓶が国中の家の前に置かれていました。 その蜜は日の光に当てると、まるで金粉が入っているかの様に光り輝いて見え、瓶の蓋を開けるだけで柔らかく優しい香りが体を包み込む様に香るのです。その蜜をひと舐めするだけでお腹の中から温かくなりなり、それが全身に広がっていきみるみる力が湧いてきました。 不思議な蜜のお陰で国民は元気になっていきました。 皆の蜜が丁度なくなる頃、今度は国中の家に一枚の手紙が届きました。 手紙にはあの不思議な蜜の作り方が丁寧に書いてあります。 なんと不思議な蜜はバケモノが育てた花から作られていたのです。 花の咲いている場所も書かれてあります。それは以前咲いていた場所と同じでした。 その場所に行くと湖を取り囲んでしまう程沢山の花が咲いています。 バケモノは王様が持っていってしまった後、僅かに残った花の種を育てていたからです。そして花の朝露を丁寧に取り、花びらと一緒に煮詰めた物があの不思議な蜜なのでした。 国民が苦しんでいる様子を見て、少しでも元気になるようにとたった1人で作っていたのです。 そうとは知らない国民の1人が「王様が持っていった花だから王様の贈り物ではないか」と言い出しました。 それは噂になり国中の人達はその蜜の事を『王様の蜜』と呼ぶようになりました。
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