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その姿から視線を逸らすことなく男の子を見ていると、男の子は裸のまま私の方を向いた。 そして、私の顔をジッと見詰めてくる。 こんな汚いババアの顔を、見詰めてくる。 「おはよう。」 普通に挨拶をされたので、私も「おはよう。」と普通に挨拶を返した。 「よく覚えてないんだけど、したの?」 私が聞くと男の子は普通の顔をして頷いた。 「した。」 「避妊は?」 「した。」 “年下の可愛い彼女はどうするんだ、悪ガキ。” という言葉はグッと飲み込んで、また口を開く。 「溜まってたの?」 そう聞いてみた私に、男の子は真剣な顔で私のことを見てくる。 バスタオルを肩に掛け、裸のまま・・・。 そして、口を開いた。 「好きだからやった。 俺、桃子のことが好きなんだけど。」 そんな言葉に私は頭を片手で抱える。 ズキズキと痛むのは二日酔いのせいだけではない。 「ありがとう、それは嬉しい。 でも、こんなことまでしてくれなくていいから。 身体張って、こんなことまでしてくれなくていいから。」 「好きな女とやれるなら、下半身張るだろ。」 そんな返事をしながらボクサーパンツを履き、スーツを着ていく。 その大きな背中を見詰めながら、聞いた。 「帰るの?」 「これから仕事あるから会社行ってくる。」 「分かった、私は帰るから。 仕事頑張ってね。」 お財布からお札を抜いて、男の子が羽織ったスーツのジャケットのポケットに差し込む。 それから、バッグと引き出物の袋を持ち部屋の扉から出た・・・。
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