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8歳も年下の男の子からそんなことを言われ、私は笑った。
「そういう冗談はやめてよ。」
そう言ってからお酒を一気に呑み、またオーダーをした。
「冗談は黒住さんの名前くらいでしょ。
黒住桃子とか、黒いんだか桃色なんだか。」
「黒いんじゃない?
私って死神だし。」
「怖いっすよね~。
黒住さんに何かしらの攻撃をすると、その社員は降格か支社か子会社に飛ばされるらしいっすね~。」
今年24歳になった人事部にいる男の子が、急にそんな口調でそんなことを言ってきた。
そんな、本当のことを言ってきた。
黒住桃子、来年の3月で32歳。
2人の子持ちである私は、死神と呼ばれている。
「僕じゃダメですか?
黒住さんの相手。」
そんな死神に、24歳のピッチピチな男の子がそう言ってくれる。
年下の可愛い彼女がいるという男の子が、こんなババアにそんなことを言ってくれる。
それにありがたく思いながら、私は笑った。
新しく来たお酒を一気に呑んだ後に、笑った。
「本気じゃなくてもそう言って貰えるのは嬉しいよ。
でも、そんなことまでしてくれなくていいから。」
そう言って、笑った。
そこくらいまでは覚えている・・・。
そこくらいまでは、ハッキリと覚えている・・・。
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