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Ginger、ginger
「きゃあ、すごーい」「おいしそぉ」
「ねえミミちゃんちってお金持ちなの?」
「そんなことないない。こんなに豪華なの、お誕生日の日だけだってぇ」
我が娘の大人びた返答に、おい失礼だなと、小さく突っ込んだ。
「ピザ大好き!」「あたしもー」
可愛らしい歓声があちこちで飛び交っている。
子どもたちの目の前には、ピザやパスタ、パーティーには欠かせないオードブルのセット。皿に移すのもひと手間なので、買ってきたままのプラ容器でテーブルの上に置いてある。が、100均で買ってきた使い捨ての箸、プラスプーンやフォーク、ナフキン、ジュースを入れる紙コップなんかが、ピンクやオレンジ色のカラフルなデザインなので、そんな手抜きを上手に隠してくれている。
そして、誕生日には欠かせないものをテーブルの真ん中に。誕生日パーティーの主役だ。
『お誕生日おめでとう ミミちゃん』
チョコプレートに踊る文字と、8本のロウソクを刺したイチゴのホールケーキ。
(いいわ。これで完璧!)
今日はひとり娘ミミの誕生日パーティー。
招待した友達は全員女の子。だからパーティーはもちろん可愛くなくてはいけない。100均で買ってきた飾り付けのバルーンをカーテンのタッセルに刺し、ふわふわのモールを窓に貼り付けた。この、いかにもパーティーな雰囲気づくりに私はとても満足している。
(買ってきたものをそのまま飾っただけだけど……でもまあこれで十分じゃない? うん、ちゃんとキラキラだし? これこそ理想の誕生日パーティーってやつね)
私は満足げに、テーブルを見回した。
「じゃあ始めましょう。今日はミミのために、お祝いに来てくれてありがとうね」
お礼を言いながらロウソクに火をつけていく。
今日は土曜日。もともと仕事は入っていた。娘の誕生日パーティーのために取った時間休は、三時間。この後、終わったらすぐに会社に出社しなければならない。往復に要する時間もその中に含まれているから、ゆっくりはしていられない。
サービス業で土日出勤が当たり前な夫に、このパーティーのお世話を頼むことは到底できなかった。
「は? ミミの誕生日パーティー? そもそも子どもの誕生日くらいで休めねえし、俺に子どもたちの世話なんかできるわけねえだろ。おまえが休めよ」
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