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4. 蘭丸くん
その日、すみれちゃんの家で何があったのか。壁の薄いアパートでのこと、一部始終は近所に筒抜けで、町内ではずいぶん噂になったらしい。
母は私がその事件そのものを知らないことに、とても驚いていた。
「佳代、本当に全然覚えてないの? まぁ、まだ九歳だったし……むしろよかったわ」
娘が一時すみれちゃんと仲良くしていたのを知っていたからこそ、トラウマになるのを恐れ、当時母は私にその話をしないようにしていたのだという。
「あの子もまだ九歳だったのに……かわいそうにねぇ」
母は潤んだ目をつむり、眉間をもんだ。
すみれちゃんは、胡蝶蘭の花を全部握りつぶし、鉢を窓から投げ捨てたらしい。そして、逆上した両親に殴り殺されてしまったのだ。
「かわいそうなことをしてしまった」
「自分がなぜあんな理由で、娘を手にかけてしまったのか分かりません。まるで、何かに取り憑かれていたみたいだった」
裁判所で、両親はそう言って泣いたという。二人は今も服役しているはずだと、母はやるせなさそうにため息をついた。
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