2. コチョウラン

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 そんなことで子どもを叩くなんて。私は戦慄したが、同時に、すみれちゃんの家の子じゃなくてよかったと、密かに胸をなで下ろしてもいた。 「それでね、もう……お友達をうちに呼んだらダメだって」 「そっかぁ」  残念、という声を出したのは、私なりの気遣いだった。そんな暴力が行われている家に行くのは、正直言って怖い。それに、あの六畳間には、他人の家ならではの独特な匂いと熱気がこもっていて、居心地が良くはなかったのだ。 「まあ、外でも遊べるしね」  そう言ったものの、翌月のクラス替えで別の組になったすみれちゃんと私は、それ以降、一緒に遊ぶことはなかった。
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