エアコンのスイッチ

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 僕はその日リモートワークで、自分の部屋で仕事をしていた。そこから夕飯の時間になって、リビングに戻ると微妙に暑い。  「エアコンの温度下げてよ」僕は妻の里美にそう言った。すると里美は「自分で下げればいいじゃない」と言った。  僕は最近、里美との仲が悪い。  僕は「わかったよ」と言うと自分でエアコンのスイッチを手に取った。見ると温度は「28度」  「暑いなぁ」と里美に厭味ったらしく言うと27度に下げた。里美は「私はこのくらいがいいの」と言ってどこかに行ってしまった。  結婚してからというもの、いつも仲が良かったのに、最近になって徐々に関係が悪くなっている。  原因は些細なことで、それはエアコンの温度設定だ。  僕は夏暑くていつもリビングの部屋の温度設定を27度にしている。里美はそれが寒いと感じるのか「28度にしたい」という。そこでいつも喧嘩になるのだ。また、里美は「1度上げるだけで電気代がだいぶ変わるんだから」と言うが、たった1度で電気代がそこまで変わるのかと思う。  そして、僕は夕飯を食べてから自分の部屋で仕事をしていた。  ふと、喉が乾いたのでリビングに行き、ドアを開けた。そして冷蔵庫から飲み物を取りにいこうと歩くと、キッチンテーブルの上で寝ている里美がいた。  どうやら今月の家計簿をつけていて疲れて寝てしまったようだ。  その家計簿を見ると、メモ書きで「今月は電気代が前の月より300円高かった」と書いてあった。  僕はそれを見て少し悲しくなった。  そのときエアコンの温度設定で夫婦喧嘩していたときのことを思い出す。  いつも自分のことしか考えていなかったな。こんなに毎日一生懸命家事や家計のことを考えてやってくれているのに、自分のわがままでつらい思いさせて申し訳ないな・・・僕はそう思った。  エアコンを見た。設定は27度のままだ。  僕はそっとエアコンのスイッチを手に取ると、エアコンの温度を28度に設定して、里美の肩に毛布をかけた。
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