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クランクアップ
ドラマの撮影が終わった・・・・始めての大作そして主演。
共演者やスタッフ達とも毎日が楽しかった、あっという間の半年だった。
新しいドラマのためのオーディションに参加して選ばれた共演者達、低予算のために出演者はすべて新人でオーディションで選考して集められたメンツだった。
特に遠野 夏生とは撮影が進むにつれて、本当に心まで持っていかれたくらい夢中になった、本気で好きなんだと思ったぐらい・・・・
でもきっとこれは、ドラマに入れ込んだせいだ、終わってもまだ抜け出せないんだと自分に言い聞かせた、
撮影後しばらくは脱殻のようになって、気持ちを変えるために旅行にも行った!
遠野 夏生もまた、始めての大作そして主演だった
霧野 七海との撮影は合間合間のじゃれあいも、セリフ合わせも口げんかも本気の喧嘩も今思えばすべていい思い出で楽しかった。
でももうそれも終わった、きっと今頃は次の仕事に夢中で俺のことは忘れてしまっただろう。
俺にとって霧野 七海は、年上なのに純粋で真面目でそれでいて愛くるしくて撮影の途中から、本気で抱きしめたくなった!
最後のシーンで、七海が俺を見つめて笑った時後一歩近づいてお前を抱きしめたい衝動を押さえるのに必死だった!
あの時俺を見つめるまなざしは本当に俺を愛する目だった………でもそうじゃない、お前の演技がそれだけ上手いって事なんだよな。
勘違いしそうなほどの迫真の演技、それができるのが霧野 七海という俳優なんだ。
撮影が終わってみんなでヒット祈願をして食事して、全てが終わって俺たちはみんなそれぞれ次の仕事へと別れていった!
あの時七海に声を掛けたかったけど・・・・・・やめた!
きっとこんな気持ち俺だけなのだとお前は全て仕事だったんだと自分に言い聞かせた!
あれから半年ドラマが放映された、誰もが驚くほどの数字が出た。視聴率が伸びるにしたがって俺たちの知名度も瞬く間に全国へと広がっていった。
再生回数は上がり続け、テーマ曲もヒットし番宣のためのインタビュー、ファンミーティング、バラエティ番組への出演と次々と仕事が決まり、共演者たちと会う機会が増えていった!
あの日久しぶりに逢った霧野 七海と俺はあの時と同じ目でお互いを見た!
その時お前と俺は同じ気持ちだとはっきりわかった、ファンミが終わって俺はお前の手を取ってバイクに乗せて走った。
夏になる前の暗い道を2人走り続け、誰もいない海まで来て手を繋いで歩いた。
足にかかる海の水がひんやりと気持ち良かった、黙ったままずっと歩いた。
砂の上に座って俺はお前に言った
「あれからずっと七海に逢いたかった。
でもドラマを引き継ってるだけだと思って自分を抑えてきた・・・・・でも今日お前に会って俺はお前の事が本気で好きだとわかったんだ」
「夏生!俺もずっと忘れられなかった・・・・・君のことを吹っ切ろうと旅行にも行った・・・・・でも美味し物を食べても、美しい景色を見ても、君と一緒なら…………いつもそう思った。」
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