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1. 異世界召喚
当たり前の日常が突然なくなるなんて考えたこともなかった。
いつものようにバスに乗って大学へ行くはずだったのに。
覚えているのは急ブレーキの音とドン! という衝撃。
「……えっ?」
陽菜は見知らぬ床に座り込んでいた。
バスじゃない。
石畳のひんやりとした床。
自分の着ているTシャツとGパンが目に入る。
持っていたはずのカバンは手になかった。
「OHHHH!」
部屋が揺れるくらいの大歓声。
驚いた陽菜は顔を上げた。
見知らぬ場所、変な服の人達。
薄暗い部屋。
ここはどこ?
前からキラキラの王子っぽい服装の人が歩いてくる。
白い服に金のジャラジャラ。
演劇で王子をやるならあんな服だろう。
周りが全員お辞儀をする。
やっぱり偉い人のようだ。
王子は満面の笑みで手を差し伸べた。
陽菜の隣の美人に。
白いブラウスに花柄のスカート。
緩やかに巻かれた茶髪、バッチリなメイク。
王子の手を取り、立ち上がった彼女の足には赤いハイヒール。
「京香よ」
名前を聞かれたのだろうか?
花柄スカートのお姉さんがそう答えた。
そのまま歩いて行ってしまう2人。
ねぇ、ちょっと待って。
私はどうしたらいいの?
陽菜は放心状態のまま王子とキョウカの後ろ姿を見送った。
次に歩いて来たのはまた王子。
今度はさっきより若そうだ。
弟なのかもしれない。
彼も手を差し伸べた。
陽菜の後ろにいた女子高生に。
……ちょっと待って。
人数おかしくない?
これ異世界召喚とか転生とかそういう系じゃないの?
女子高生は私立だろうか。
ブレザーに可愛いチェックのスカート。
ハイソックスには学校のマークのようなものが見えた。
「私、芽郁です」
手を取り、立ち上がる女子高生。
彼女と陽菜は目が合った。
「あの、ここはどこですか?」
不安そうな彼女。
メイは弟(だと思う)王子の言葉を聞きながら驚いたり目を伏せていた。
手を引かれながら何度も陽菜の方を振り返りながら歩いて行く。
陽菜は2人が部屋から出て行くのをぼんやりと見送った。
……。
それで、私はどこへ行ったら良いの?
誰か教えてください。
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