1. 異世界召喚

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「……目を覚ますと、親切な人が助けてくれていて、どこかの家で目が覚めるべきじゃない?」  陽菜は誰もいない草むらで思わず突っ込んだ。  今日も雨。  倒れた場所でそのまま目が覚めた。  いや、ありえないでしょ。  ずぶ濡れの陽菜は苦笑した。  石畳で打って痛かった膝はもう痛くない。  擦りむいたかなと思っていた手も特になんともなっていなかった。  はぁ。  陽菜は渋々立ち上がった。  せめて雨やどりできそうな木の下には行きたい。  無駄に広い草原には家どころか木すらないけれど。  お腹もすいたし、喉も乾いた。  上を向いて雨を口に入れるが、喉は全く潤わなかった。  本当に何なのだろう。  覚えているのは急ブレーキの音とドン! という衝撃。  ……死んだのかな?  陽菜の黒眼が揺れた。  そういえば、同じバスにあの花柄スカートの京香さんが乗っていた気がする。  あの女子高生の芽郁ちゃんも後ろに座っていたかもしれない。  バスの事故でここへきてしまったのだろうか。  迷い込んだにしてはすごい歓声だった。  待っていました! みたいな。  王子の花嫁を召喚?  王子2人の可愛い花嫁が来たから、あとは外にポイ?  だったら最初から2人だけ連れてくればいいのに。  3人連れてきて1人だけポイは酷いだろう。  せめて生きていくための最低限の知識とかお金とかあってもよかったのではないか。  陽菜は行くあてもないまま歩いた。 「……森?」  森の中は暗そうで、入るのが少し怖い。  陽菜は森の一番手前の木の下に座り込んだ。  お腹も空いたけれど食べる物もない。  喉も乾いたけれど葉っぱに溜まった雨を飲んだだけでは潤わない。  これからどうしたら良いのだろう?  木にもたれるように座ると、疲れてたせいか陽菜はあっという間に眠ってしまった。
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