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105. 推し活
今日は日曜日。
朝からクッキーを作り、王子達に渡してほしいとユリウスに頼んだ。
アレクサンドロは王子同士の昼食会に行ってしまったので、今日の昼食は一人でスープを飲んだ。
吊り橋効果は継続中。
朝からなんとなくアレクサンドロと話すのが恥ずかしい。
急に意識しだして、ぎこちなくなっていると思う。
アレクサンドロとは森で出会い、ヴォルク国に連れてきてくれた。
汚い姿だったのにベッドも貸してくれて、食べる物も住むところも用意してくれた。
今思えば、毎日狼の姿で寝てくれているのは、私がこの世界で不安にならないようになのかもしれない。
暖かいアレクサンドロの隣にいるといつもすぐ眠たくなってしまう。
一緒に眠らない日は、布団が冷たくて、寂しくて、なんだかあれこれ考えてなかなか眠れない。
求婚してくれたのに国王の前で断って傷つけたし、中央公園だって倒れてしまった。
先日の森でも婚約しようって言ってくれたのに結局は婚約者候補で都合よく利用するだけ。
調印を提案して他国から守ってくれたし、変態からも身を挺して庇ってくれた。
そういえば変態がドアノブを触った時も側に居てくれた。
こんなにいろいろしてもらっているのに、ランディとディーンとフィリップとふらふら遊びにいってしまう自分をアレクサンドロはどう思っていただろうか?
アレクサンドロが行けない街に遊びに行き、武官や文官で働き、今日はこれを食べたとか街にこんな店があったとか、オオカミが可愛いとか。
無神経だったのではないだろうか?
普段は色気のない黒いズボンに、髪も後ろで一纏め。
前髪も長くて眼鏡もして、目も合わせない。
喪女すぎる!
どうしよう。
急に好きかもしれないなんて気づくなんて。
今までの残念すぎる行動をすべて消してしまいたい。
急に前髪を留めたら変だろうか?
眼鏡をやめたら驚くだろうか?
ワンピースの日を増やしたら変だろうか?
うわ。どうしよう。
これでは完全に恋する乙女だ。
似合わない!
優しくされて、さらに吊り橋で、ただの勘違いかもしれない。
イケメンが喪女を好きになるはずがないし、何よりアレクサンドロは王太子。
こんな一般庶民がどうにかなるレベルの人ではない。
でも、もし、もしも……。
いや、そんな期待も喪女はしてはダメだ。
推しだ! 推し!
アレク推しで行こう。
喪女はそれが限界。
そう思いながらもワンピースを手に取ってしまう自分にヒナは苦笑する。
もう少し動きやすいもの、ロングのキュロットパンツでスカートっぽく見えるものを作ろう。
ミシンを買った時にユリウスが買ってくれた布があるし、ボタンもある。
部屋着を型紙代わりにすればいけるだろうか……?
今日のやる事が決まったヒナは布を手に取り作業を始めた。
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