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106. 好き
月曜日の武官の日はランディが、火曜日の文官の日はディーンが、夜会に現れた変態について心配してくれた。
同時に護身術がすごかったと聞いたと揶揄われたけれど。
街では鳥族プチィツァ国、熊族ミドヴェ国、豹族レパード国と友好国になったことがウワサになっているとナイトリー公爵が教えてくれた。
もう武官や騎士が争いで命を落とすことはないし、街も被害を受ける事がなくなったとみんな喜んでいるそうだ。
熊族ミドヴェ国、豹族レパード国の店もすぐに出店準備にかかるので、事務所がまた2軒も取られると言いながらも嬉しそうにナイトリー公爵は笑った。
「今週の土曜日に召喚者を国境で引き渡すと連絡があったよ」
コヴァック公爵はやっぱり国家予算5年分はムリだったねと笑っていた。
ロウエル公爵は熊族ミドヴェ国のアービン公爵と意気投合。
新しい作戦を思いついたと画策中だそうだ。
慰謝料をもらったら、きっとチェロヴェとも友好国になるのだろう。
あーあ。
あと1週間、アレクが好きだと気づかなければよかった。
そうすれば、街で一人暮らしになっても少し寂しいな。くらいですんだのに。
ヒナは窓からぼんやりと外を眺めた。
「……なんだかずっと元気がないな」
「アレク様もそう思いますか?」
夜会以来、なんとなく元気がないヒナ。
武官や文官の仕事は普通に行っているし、食事も普通に食べてはいるが。
ふとした瞬間に見せる寂しそうな表情は何だろうか?
まだ夜会の恐怖が残っているのだろうか。
「ユリウス、休憩していいか?」
「えぇ。かまいませんよ」
アレクサンドロは狼の姿になるとヒナの部屋へと遊びに行った。
「……アレク?」
時計はまだ午前10時。
「サボり?」
お兄様に怒られるよと笑うヒナの足に擦り寄ると、アレクサンドロはお座りをしてヒナを見上げた。
今日もヒナは眼鏡をしていない。
履いているのは不思議なズボンだ。
日曜日に夕飯も忘れて夢中で作っていた服だな?
アレクサンドロの綺麗なグレーの眼と目が合ったヒナは、ブラッシングする? と微笑んだ。
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