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部屋のど真ん中に寝転がるアレクサンドロ。
ヒナはブラッシングセットを棚から取ると、アレクサンドロの横に座った。
櫛で背中を梳くと綺麗な毛並みに線が付く。
黒と濃いグレーのメッシュだ。
首の後ろは少しふかふかなので、細かい櫛で丁寧に。
三角耳の後ろをぐりぐりマッサージすると、耳の先がピクっと動いた。
尻尾はふさふさで、足の先は少し白くて。
肉球もぷにぷにで可愛い。
「グァウ?」
普段触らない肉球を触られたアレクサンドロが振り返る。
「イヤだった?」
ごめんねと言ったヒナの顔は少し泣きそうに見えた。
狼のアレクサンドロは起き上がり、ヒナの口をペロリと舐める。
「あ! アレク、スナック菓子食べたでしょ」
ほのかに香るジャガイモっぽい匂いは、きっとあのお菓子。
朝から食べたの? とヒナは笑った。
「そろそろ戻る?」
一緒に向こうの部屋に行こうかとヒナが言うと、狼のアレクサンドロはグァウと返事をした。
少し先を歩き、振り返りながらヒナを確認するアレクサンドロ。
まるで森を2人で歩いたときみたいだ。
またヒナの顔が泣きそうになる。
アレクサンドロは立ち止まり、ヒナを見上げた。
「ん? どうしたの?」
「グォウ」
そんな顔をしているって気づいていないのか?
何があったんだ?
聞きたいけれど、狼の姿ではヒナには通じない。
アレクサンドロは執務室を通り過ぎ、奥の部屋で着替えた。
執務机の前を通り過ぎ、ユリウスの横を通り過ぎ、本棚を眺めているヒナの所へ一直線に進む。
「アレク様?」
「アレク?」
ヒナの手を捕まえ、再び奥の部屋へ向かうアレクサンドロに、ユリウスもヒナも驚いた。
「あれ? 仕事は? アレク?」
ユリウスの方を振り返りながら確認するヒナ。
アレクサンドロは自分のキングベッドにヒナを押し倒すと、ヒナの上からグレーの眼でじっと見つめた。
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