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「そちらの国に入らせてもらっても?」
「えぇ、どうぞ。ただし獣は攻撃するのが我が国のルールです」
人の姿なら問題ありませんと笑うチェロヴェ国第1王子クロード。
「ではお邪魔するとしよう」
ロウエル公爵はニヤッと笑うと結界の中に足を踏み入れた。
魔力が高いロウエル一族。
それでもこの結界にどんどん魔力が吸われているのがわかる。
人の姿は5分持たないかもしれない。
「なっ、なぜ獣に変わらない!」
焦るチェロヴェの人達を横目に、ロウエル公爵はマートン・ニールに近づいた。
「無事か?」
「この鎖を外してはダメです。土から外れた瞬間に罠が発動し捕まります」
マートン・ニールがロウエル公爵に小声で告げる。
「鎖を切るしかないか」
「もしくは私の足を切るしかありません」
マートンは自分の足を切ってもらって構わないとロウエル公爵に言う。
「結構頑丈そうな杭だな。宰相、何か道具はあるか」
そろそろ姿が狼に変わりそうだ。
ロウエル公爵は戻りながらお金の入ったスーツケースを結界の向こうに投げる。
ランディとランディの兄が受け取り、結界まであと2、3歩の辺りで、ロウエル公爵の姿は狼に変わった。
急いで結界の向こう側へ飛び、ギリギリ攻撃は免れる。
チェロヴェの大臣の1人が時計を確認する姿が見えた。
おおよそ5分。
時間さえ稼げば聖女が出るしか無くなる。
チェロヴェの大臣はニヤッと笑った。
「なるほど、抜いてはいけないのか」
これで切れるだろうかとコヴァック公爵が取り出した工具は3人がかりで切る大きな工具。
ロウエル一族の3人が工具を持って結界内に入った。
彼らは4分が限界。
狼になる前に急いで戻る。
次の3人と交代し、大きい鎖は切れたので細いワイヤーのみあと1本だと報告を受けた。
ロウエル一族は9人。
ロウエル公爵と分家6人を使ってしまった。
残りはランディとランディの兄。
だが彼らは最悪の事態に備え、まだ使用したくない。
「いけるか?」
「もちろんです」
狼の姿のロウエル公爵に代わり、ランディの兄がイワライに尋ねると、イワライは頷いた。
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