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コヴァック公爵に細いワイヤーを切る道具を渡される。
「イワライはロウエル一族だったのか?」
アレクサンドロがユリウスに尋ねるとユリウスは首を横に振った。
「アレク、後で話すよ。全部」
工具を持ち、手をヒラヒラさせながら行ってくるねと笑うイワライ。
深呼吸をしてからイワライは結界の中に入った。
4分経っても姿が変わらないイワライ。
だがワイヤーが硬くて切れない。
8分。
赤くなった手にはもうあまり力が入らない。
もともと狼族よりもひ弱なのだ。
10分ほど経つと、さすがにチェロヴェがざわつき始めた。
ようやくブツッと切れたワイヤー。
だが、切れた途端、マートンとイワライはチェロヴェの騎士に囲まれた。
「あー、ここまですると、ホント最悪だな」
ミドヴェ国ナットが呟くとレパード国レイナードも同意する。
「結界さえなければ応戦するのに」
ロウエル公爵と意気投合したアービン公爵が溜息をつく。
すんなり渡す気はないと思っていたがあまりにもひどいとヒナは溜息をついた。
「ねぇ、ちょっと」
一歩国境に足を踏み入れると結界の膜が揺れる。
アレクサンドロはヒナの腕を掴み、それ以上、中に入らないように捕まえた。
「~~~~!」
「え?」
アレクサンドロはヴォルク国側、ヒナは左足以外チェロヴェ側だ。
「~~~~」
「え? だからなんて言っているの?」
ヒナが首を傾げるとみんなが変な顔をした。
ヴォルク国側の人達だけではない。
チェロヴェ国側の人も不思議そうな顔をしている。
「~~~~~~~~」
「~~~~!」
「~~~~! ~~、~~」
え?
みんなの言葉がわからない。
ヒナは腕を掴んでいるアレクサンドロの顔を困った顔で見上げた。
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