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108. 粉々
この世界に来た時、そういえばなんと言っているのかわからなかった。
わかったのは一緒に召喚されたキョウカさんとメイちゃんの言葉だけ。
一緒に話していたキラキラ王子の言葉はわからなかった事を今頃ヒナは思い出した。
キョウカさんとメイちゃんは王子と会話をしていたので、聞き取れないのはたぶん自分だけ。
ヒナは結界を潜りヴォルフ国側に戻った。
「行ってはダメだ」
「あ、アレクの言葉がわかる」
ヒナは再び結界を潜りチェロヴェ側に。
「~~~~! ~~! ~~!」
やっぱりアレクサンドロの言葉はわからない。
この結界のせい……?
ヒナはなんとなく結界を見上げた。
結界が弱まっているから新しく呼ばれた聖女。
見た感じ壊れそうとかわからない。
「~~! ~~~~~~?」
「~~~~!」
あー、誰の言葉もわからない。
イワライとマートンは騎士に囲まれ、ドヤ顔のチェロヴェ王子。
心配そうなアレクサンドロ。
ロウエル公爵の銀狼姿、大きくてカッコいいなぁ。
狼族以外も言葉はわからない。
誰の言葉も。
「~~~~~~」
「~~~~!」
「~~、~~~~」
騎士の1人が何かを言いながらイワライの顔に剣を突きつける。
イワライも何かを言い返しているように見えた。
「もー! なんでわからないの?? なんでもいいから、さっさとマートンとイワライをこっちに寄越しなさいよ、卑怯者!」
ヒナは右足を思いっきりダンッと踏み鳴らす。
ヒナの甘い魔力が一気に放出し、半径1km程の範囲を駆け抜けた。
右足はちょうど結界の膜の上。
嫌なパキッと言う音が響く。
「……パキ?」
えっ? と足元を見るヒナ。
ミシミシッとヒビが広がるような音がする。
慌ててヒナの腕を引き寄せ、抱きしめるアレクサンドロ。
アレクサンドロと結界の間にはユリウスが立つ。
各国の王子達もそれぞれ護衛に守られた。
バリバリバリバリと大きな音を立てキラキラ光る破片が空から降り注ぐ。
ただし実体はない。
「不思議だな」
コヴァック公爵が手のひらを広げたが、何も乗ることはなかった。
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