108. 粉々

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 イーグルのフィリップと緑の鳥の幼馴染が光の中を飛ぶ。  キラキラ光る綺麗な空は何か舞っていそうなのに、何にも触れずに普通に飛ぶことができた。 「は?」 「……まさか」  怯えるチェロヴェの人族達。 「まさか?」  ニヤッと笑いながらランディが結界の中だった場所へ足を踏み入れる。 「あぁ、結界は壊れてしまったね」  グレーの眼を細めて微笑むと、イワライとマートンを囲んでいる騎士達を見た。  狼のロウエル公爵が大きな声でグァウと吠える。 「うわぁぁ、助けてくれ!」 「逃げろ!」  一目散に逃げていく騎士。 「おい、お前たち! 王子を置いて逃げるとは!」  チェロヴェ国第1王子クロードは後退りし、宰相も急いで逃げ出した。  残されるマートンとイワライ。 「友好国にはなりたくないな」  レパード国第1王子レイナードが逃げたチェロヴェの人族達を見て溜息をつく。 「卑怯者とは友人にもなりたくない」  ミドヴェ国第3王子ナットが笑う。 「大丈夫か?」 「う、うん、あー、えっと、壊しちゃった?」  気まずそうにヒナが苦笑すると、アレクサンドロは「粉々」と笑った。  イワライに連れられ歩いてくるマートン。  ヒナの前に来ると深々と頭を下げた。  マートン・ニールは60歳くらいだろうか?  おじさんというより白髪のお爺さんだった。  おかしいな。  50歳くらいのはずの宰相、コヴァック公爵、ロウエル公爵はイケオジなのに、60歳くらいのマートンは老けている。  狼族と人族の違いだろうか? 「本当にすまなかった」  国の命令とはいえ、見知らぬ世界へ呼び、人生を狂わせた。  雨の中追い出されるのを止めることもできなかったとマートンは涙を浮かべながら謝罪した。 「グーですからね。ちゃんとお腹に力を入れてくださいよ」  なぜかマートンの隣のイワライを見ながら言うヒナ。 「あぁ。気がすむまで」  マートンは目を閉じ、下を向いた。
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