2. 3人の聖女

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「護衛騎士達から召喚の儀でもう1人、見知らぬ男がいたと報告がありました」  黒髪を後ろで縛り、眼鏡をかけ、ズボンを履いた背の小さな男だったと報告があったと宰相が言う。  知らない言葉を話し、こちらの質問にも答えなかったと調書には書かれていた。 「召喚する聖女は1人のはずが2人に。その影響で男も来てしまったのかもしれないですな」  なぜ失敗したのかわからないが、どちらかが聖女で国に結界さえ張ってもらえれば問題ないと魔術師団長は言った。  この国は獣人の国に囲まれている。  彼らは我々人族よりも遥かに凶暴で力も強い。  国全体を聖女の結界で守る事により国民の安心感を得ていた。  前回の聖女召喚は約1000年前。  最近、結界にほころびが出てきたのか国の中に獣が迷い込んでくるようになってきた。  そのたびに騎士が派遣され、獣を退治している。  たとえまだ子供の狼でも。 「聖女を選んだ王子を王太子にする。もし2人とも聖女だった場合は、第1王子クロードを王太子に」 「はい陛下」  国王陛下の言葉をメモし、宰相は一礼した。  これは派閥ができそうだ。  第2王子ハロルド様が王太子になるチャンスもある。  第1王子クロード様も安泰だと思っていた王太子の座が危うくなれば焦るだろう。  魔術師団長が一礼し謁見の間を去ると、国王陛下は宰相を見た。 「召喚の儀に現れた男はどうした?」 「はい、城の外へ。裏口から追い出したと騎士から報告がありました」  宰相は調書を確認しながら答えた。  何も持っておらず、名前も出身地も答えなかったと書かれてる。 「男が聖人だという可能性は?」 「まさか」  宰相は眼鏡を押さえながら肩をすくめる。 「では、念のため男の行方を追っておきます」  どちらの方角へ行ったかもわからないが、お金もないのでそう遠くへは行っていないだろう。  裏口から真っ直ぐ進んでも何もない。  あの先は人が住めない『死の草原』。  道もなく、濃い魔力の草原が広がり、あとは国境前に森があるだけ。  余程の馬鹿でもそんな地域に行かないだろう。  城の表に回って、右の街か、左の街か。  騎士を数人お借りします。と宰相は一礼した。
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