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利明は助けを求め、雅樹を見つめた。彼はこの状況を面白がっているようで、利明を肘で突きながら早くお礼言えよと促した。
「意味わからんしっ」
利明が窓を閉めようと手を掛けたとき、女は叫んだ。
「あーっ!こらっ!先輩をシカトする気か」
すると昇降口から2人の女生徒が出てきて、女を囲むよう隣に立った。
「真希子!何やってんねん」
どうやら、騒がしい女の名前は真希子と言うらしい。利明のいる3階までは何を話しているのか聞こえなかったが、真希子が利明を指差すと、女3人は彼を見て一斉に口を開いた。
「入学おめでとうー!」
「ぎゃはは」
「みんなおめでとう!」
真希子を中心に、女達は笑いながら3階の廊下に並んだ新入生に向かって叫んだ。新入生も負けじとはしゃぎだし、窓から体を乗り出して雄叫びをあげる男もいた。
「3年生かな?名札が赤いし。超可愛くない?」
まるで有名人を見ているかのように、廊下には女の甲高い悲鳴が響いた。雅樹も、ありがとうと叫びながら手を振っている。利明はそれを呆れ顔で見ていた。
「なにを騒いどんじゃっ」
とうとう矢野が教室から出てきてしまった。騒いでいた生徒たちは、一瞬にして黙り込んだ。
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