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城南高校に到着するとスーツ姿の男が、車を校庭の方へと誘導する。校庭からは、車を停めた父兄がちらほらと下駄箱に向かって歩いていく。その中には、両親のみならず、祖父母らしき人とも歩いている男子生徒もいた。
利明は、通りすぎる人達を横目に見ながら車を降りた。
「お父さん来れなくて残念ね。おばちゃんが利明くんの写真、バッチリと撮ったるからね」
江利子がデジタルカメラの入ったハンドバックを、利明に向けて掲げた。彼女は気を遣ってくれているのだろう。利明は笑顔を作って彼女に頭を下げた。しかし、うまく笑えたかは自信がなかった。
「おーいオカバ!あっ、雅樹もおるやん。おはよう」
江利子が1人体育館に向かい、クラス分けの書かれた掲示板の前に利明と雅樹がいた。2人は声が聞こえた方に顔を振り向かせた。下駄箱から手を振る男がいたが、逆光で顔はよく見えない。しかしシルエットから、同じ中学校を卒業した沢目卓佑ということがわかった。
彼の身長は中学入学当時で180cmだった。バスケットボール部の部長になり、卒業する頃には身長が190cmを越えたという。高校入学までの休みの間に、また少し背が高くなったように見える。
「おー、沢目や。お前もここ受けてたんか」
利明が言うと、雅樹が肘打ちをして呟いた。
「おいおい、入試ん時3人でチャリ乗ってきたやん」
「ジョークやし」
利明は雅樹の方を向いた。2人の会話が聞こえていなかった沢目は、笑顔で駆け寄った。あまりの背の高さに、つい2人は身構えてしまい、笑いこけた。
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